小学校や中学校の学校行事、音楽会や合唱祭。
その伴奏をするときに多いのが”オーディション”という方法。
私は小学校~中学校、毎年合唱コンクールという学校行事があり、必ず伴奏をしていました。
田舎だからか、時代か分かりませんが、当時はオーディションなんてものはなく、自他推薦のような形で決まっていました。
ピアノのレッスンをしていて、生徒から「伴奏のオーディションがある」との相談がありカルチャーショックを受けました。
伴奏のレッスンしていくうえで、曲によって表現方法もちがい、指導も変わってきます。
しかし他のオーディション参加者との差をつける共通するテクニックがいくつかあります。
それを必ずはじめに伝えています。
今回はレッスンではじめに伝えている内容をまとめてみます。
※小学校や中学校の合唱伴奏を対象にしています。
※曲によっては当てはまらない場合もあります。
他の伴奏者と差をつける方法
曲がちがえば、もちろん使うテクニックも、表現方法も、全く違います。
しかし毎年何名ものレッスンをしていると、共通する内容もあることがわかります。
私はソロの演奏よりもアンサンブルの方が好きで、学生の頃から弦楽器、声楽を中心にたくさん伴奏や室内楽を経験してきました。
高校の時に経験したオーケストラとのコンツェルトの共演が大きな影響を与えました。
友人に声を掛け、いつか教室行事でアンサンブル勉強会もしたいと思っています!
伴奏はソロの演奏とは違います。
伴奏がソロの演奏方法とは違うところは
- 左右のバランス
- 音域への理解
- クレッシェンドのかけかた
そして「いかにも」な伴奏形がたくさん出てきます。
- 8分音符や16分音符でのジャカジャカ形
- 4分音符でのジャンジャン形
めっちゃくちゃ出てきます。
しかしこの形はソナチネやソナタなどを弾いている方だと分かると思いますがきれいに弾くのはとっても難しいんです。
今回は小学校や中学校の伴奏を対象としています。
”普通に弾けばこうなるけど、そこを気を付ける”と他と差をつけられます。
そして練習の時の注意点は
- しっかりテンポキープが出来るか
- リズムが正しく取れているか
- 頭はピアノ譜、耳は合唱譜
- 伴奏部分と前奏、間奏、後奏の弾き方を変える
ここがとても大きなポイントになります。
左右のバランスはメロディーとバスで枠組みを作る
ピアノのソロ曲は右手がメロディー左手が伴奏形が多く、伴奏形である左手は基本的に小さく弾きます。
しかし、合唱曲の伴奏においてはこれに当てはまりません。
まず、前奏、間奏、後奏部分をのぞいてメロディーは歌のパートになります。
ではピアノの役割は?
ピアノは歌を支えるもの。
左手が歌の土台、右手で色どりを変えていく
そんな作りになっています。
なので、歌のパートを支えているのが左手です。
右手の音(伴奏形)は色どりを変えていくので変化音はしっかり示す必要がありますが、あまり主張してはいけません。
※後述する音域の部分においても、右手は細かく調整が必要です。
極論、左手のバスの音と歌のパートがあれば音楽が作れるようにしていく必要があります。
伴奏において、左手はとても重要パートです。
音域について考える
次に音域について。
音域を簡単に説明すると、音の高さのことです。
注意すべき点はこちら
- 歌は人の声を音にしているので、出しやすい音域とそうではない音域がある。
- 小学校、中学校の合唱曲のメロディーの多くはト音記号の譜表におさまる音域で書かれている。
出しやすい音域と出しにくい音域を理解して邪魔をしないように
まず出しやすい音域について。
出しやすいというのは大きな音を出しやすい、という観点で考えます。
歌う時は地声とはちがうので、低い音は出しにくいです。
例えば真ん中のファから下の音域は出しにくく、ソ~高いレの音域は比較的出しやすいです。
なのでメロディーライン(歌)がその音域でいる時には歌とのバランスを気を付ける必要があります。
しかし貧弱になってしまってはダメです。
- 音量は小さくても手のひらの筋肉を使い、詰まった音を出す
- 音域の近くない左手で支える
この方法で歌を支えていきます。
音域がかぶらない左手で歌を支える
では「音域の近くない左手で支える」について考えていきましょう。
合唱の伴奏で上手くいかない理由の一つが、歌のメロディーパートと同じ音域の音を大きく弾きすぎていることがあげられます。
ピアノの伴奏パートでいうと右手の音域です。
そして右手は伴奏形が多いのでうまく弾かないと一気に幼稚な演奏になってしまいます。
歌のパートをしっかりと聴き手に届けるためにはその音域を邪魔しないバランスを作っていく必要があります。
その点でも右手は音のバランスをしっかり考えて弾きましょう。
音域の離れている左手で歌をしっかり支えていきます。
クレッシェンドのかけ方
クレッシェンドもソロの演奏とは少し違ったかけ方をしていきます。
例えば大きく分けて2種類
- 歌のクレッシェンドを追いかける方法
- 歌のクレッシェンドを引っ張る方法
それぞれ役割がちがってきます。
歌のクレッシェンドを追いかけると、曲のうねりが大きくなる
歌のクレッシェンドを追いかけていく方法は、声のクレッシェンドの限界を押し上げる効果があります。
フレーズの途中でこの方法をとると、曲にメリハリが付き、うねりが大きく聴こえます。
まずは左手のバスで歌と同時に仕掛けていき、右手を後追いさせていくと上手く聴こえます。
歌のクレッシェンドを引っ張ると、一気に頂点まで連れていける
次にクレッシェンドを引っ張る方法は、曲のさび前部分に効果的です。
歌い手の体と心の準備をピアノでしてあげる必要があります。
テンションを高めるためのクレッシェンドです。
この場合は大抵の場合、伴奏にしっかりとクレッシェンドが書いてあったり、最終拍に音型で「いけよ~!」という合図があります。
そこでしっかりピアノが反応することで、曲が一気に頂点に行くことが出来ます。
伴奏形をうまく弾くコツ。幼稚な演奏にならないためには。
右手によく出てくるジャカジャカ形やジャンジャン形。
これ、本当にすごく差が出てくる部分です。
ここをうまく弾かないと、一気に幼稚な演奏になります。
逆に言えば、ここをうまく弾けると周りと差をつけることが出来ます。
幼稚な伴奏形になってしまう理由:ピアノ伴奏譜しかみていない
伴奏形が幼稚な演奏になってしまう理由はこれです。
ピアノ伴奏譜しか見ていない!
どうして伴奏譜だけ見てしまうと幼稚な演奏になるかと言うと、伴奏形がただのリズムを刻むだけになってしまうからです。
メロディーラインは歌パートにあり、実際には弾きません。
なので曲のフレーズ感や音型を無視した、ジャカジャカリズムを刻みがちです。
そうなってしまうと、本当にうるさいだけの伴奏です。
伴奏形をうまく弾くコツ
すこし面倒ですが、一度フレーズごとに処理をしていきましょう。
たいていの曲は2小節+2小節、4小節+4小節、8小節+8小節のまとまりで出来ています。
(知識のある方だと、楽節、小楽節、大楽節という言葉を知っているかもしれませんね。)
歌のフレーズごとに伴奏形を分けていきます。
歌のフレーズを見て、そのフレーズの山を考えていきます。
その山は高いのか?低いのか?
大きいのか?小さいのか?ここまで考えられるとさらにいいです。
そのフレーズを見ながらその山に向かってうねりを付けていきます。
ここで注意しないといけないのが、音1つずつ、または拍ごとに重さをのせてしまうと、縦割りの演奏になり、一気に幼稚になってしまいます。
そうならないためにも、山に向かって押していくような感覚で弾いていきましょう。
1つずつ落とすのではなく、フレーズで押していく。
山のあとは引いていく、そんな感覚です。
ジャカジャカの存在感をいかに消せるかが大切です。
そしてたいていの曲は2小節フレーズだと2小節目の1拍目、4小節フレーズだと3小節目の1拍目に山が来ることが多いので、まずはそこを確認していきましょう。
合唱伴奏の練習するときに気を付けること
伴奏のなにが難しいかというと、目では伴奏譜を見て弾きますが、耳は全体の音が混ざった音を聴かなければいけません。
目で見ている以上、頭で流れる音楽は、伴奏譜なのですが、耳から聴こえてくるのは合唱+伴奏。
この差にはじめは戸惑いますが、この感覚が必ず必要です。
これは伴奏だけではなくソロの演奏の時にも必要な感覚です。
(近くの音ではなく、響いている音を聴く)
なぜなら、音楽は生き物なので、歌の息づかいや間の取り方をすぐに察知し、それにしっかり合わせていく必要があります。
練習の時はもちろん歌がある訳ではなく、伴奏だけなので練習のコツがあります。
- 勝手に動かさず、インテンポで練習
- リズムを正確に取る
- メロディーに沿った伴奏:頭ではピアノ伴奏譜、耳では合唱譜
- 伴奏と前奏、間奏、後奏を弾き分ける
ソロとは違うのを分かったうえで練習していく必要があります。
勝手に動かさず、インテンポで練習
ソロの演奏と大きく違うのが、自分一人ではなく、他の人と一緒に音楽を作っていくことです。
なので、勝手に動かしてしまうと、確実に合いません。
まずはインテンポで弾けるようにしましょう。
それから、歌のメロディーによって間が空くところ、遅くなってしまうだろうところをチェックしておくのもいいです。
(分からないときは先生に聞いてみましょう)
チェックしても勝手には変えません。
あくまで歌に合わせてテンポは変えていく必要があります。
学校の先生の好みもありますので、目安だけつけておいて、いつでも対応できる心準備をしておきましょう。
リズムを正確に取る
リズムを正確に取るというのはあたりまえのことですが、伴奏となると案外崩れてしまいます。
なぜならメロディーが歌なので、強拍に音がなかったり伸ばす音が多かったり、タイが多かったり。
これはリズムが崩れる原因です。
先ほどのテンポのことも大きく関わってきますので、メトロノームに合わせて細かくリズムを取っておく必要があります。
メロディーに沿った伴奏:頭ではピアノ伴奏譜、耳では合唱譜
歌のメロディーにしっかり沿った伴奏が必要です。
そのためには伴奏ばかり練習していてもできません。
次の方法が有効です。
- メロディーをフレーズごとに音楽的に弾く→記憶が新しいうちに同じ個所の伴奏練習
- 歌のメロディーを右手で弾き、伴奏の左手と一緒に弾く
- 伴奏を弾きながら歌のメロディーを歌う
3はなかなか難しいので、2までは必ずやってみましょう。
耳で全体の音を聴くのは正直難しいテクニックです。
音源があるなら音源を聴きながら楽譜をみるのもとても効果があります。
ソロ演奏にもとてもいい影響があるので、すこし意識して全体の音を聴けるようにしていきましょう。
伴奏と前奏、間奏、後奏を弾き分ける
ピアノ伴奏と言っても、多くの合唱曲には前奏、間奏、後奏があります。
そこはソロのように弾く必要があります。
メロディーがピアノの右手に戻ってきて、歌が始まるときにしっかり歌にバトンパスします。
基本的に、ピアノソロから歌へメロディーを移すときは、進んでいたテンポを落ち着かせ、右手の存在感を少しずつ消していきます。
歌からメロディーをもらう時は、伴奏のフレーズの最後をすこし音を小さく終わらせることで、ピアノの右手に移ったメロディーが浮き上がるようになります。
例え最後がffで終わっていても、音の減衰を利用して、次に右手のメロディーが出てくるまでに、場の盛り上がりをすこし沈めておくとメロディーが浮き上がります。
伴奏とソロは違う弾き方をしないと上手くいかない
伴奏をソロのように弾いてしまうと上手く音色が合いません。
ソロの時に必要な音色と、伴奏の時に必要な音色は異なってきます。
今回まとめたのは基本的な考え方です。
全てに当てはまる訳ではないし、曲によってもっとほかのテクニックが必要な場合があります。
伴奏のレッスンは習っている先生に聞いてみるのが1番です。
でも先生の方針で伴奏を見ない先生、伴奏が苦手な先生もいらっしゃいます。
もし伴奏のアドバイスやレッスンを受けてみたい方はこちらのページをご覧ください。
門下生以外の方にもレッスンさせていただきます。
伴奏レッスン受講者の声(中学生Yちゃんのお母さま)
- レッスンはいかがでしたか?
-
今まで受けたことのない内容の濃いレッスンで、すごく分かりやすく、動画指導に、楽譜の書き込み指導、今後の課題までまとめて下さり、まさに痒い所にも手が届くご指導に感動しました!
- 印象に残った内容はありますか?
-
音の出し方や楽譜の読み取り方など専門的な視点を分かりやすくご指導されていた部分がとても印象的でした。先生のレッスンを受けピアノはとても奥が深く、勉強することがたくさんあるんだなぁと思いました。
どなたでもお問い合わせいただけます。
子供たちだけではなく、伴奏のレッスンが苦手な先生方にもアドバイスをさせていただきます♫
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 合唱伴奏オーディション:他と差をつける伴奏テクニックsakipiano-rythmique.co… […]