20年間向き合った「脱力」。ピアノを弾く時は脱力状態?

ピアノを習っていると「脱力して~!」と言われませんか?

わたしも小さなころから脱力のことについては考えてきました。
小学校高学年ころに、母以外の先生に師事し、脱力についてずっと言われていました。

そんなわたしが脱力の悩みから解放されたのは大学卒業後。

ピアノの先生になり、子供たちに指導をしていて「脱力」という言葉に違和感を感じていきました。

「ピアノを弾く時の脱力って脱力じゃないかも」
そう考えていくと、なんとなく腑に落ちたのです。

今は脱力に関してそこまで悩みはなくなっています。

その経緯などをまとめてみます。

脱力についてはいろんなメソッドがあります。
今回のお話は私の経験からのお話です。
経験談なのでどのメソッドになるのか、どのメソッドでもないのかも不明です。

まずは師事している先生の考えをうかがってみてください。

脱力に悩むピアノ学習者、指導に悩むピアノの先生がたの気づきになれば幸いです。

脱力を追いかけた過去

小さいころから、割と器用にこなし、音楽を感じることもできたのでピアノで苦労したことがほとんどありませんでした。
(反抗期や「練習嫌だ」はありました。)

音楽科のある高校に入学し、「わたしの音はなんか違う」そう思っていきました。
周りの人は私の音を「きれいな音」と言ってくれていましたが、わたしの中では自分が弾いた音が散っているように感じたのです。

音がまとまって飛んでいない。音を出した瞬間に散っていく。

そんな感覚がありました。

その時にやはりずっと言われていた「脱力」。
この感覚を身につけないと、ダメなのかな…と思っていました。

※この問題に関しては脱力だけではなく、いろいろな要因が複雑にからまっていました。
参考▶ピアノ中級以上の方向け:フレーズを長く続かせる方法

小学校高学年ころから本格的に気にしだして、高校まで感覚がつかめずにいたのです。

そしてそのまま音楽大学に入学。

大学に入ってレッスンを受けて、なんとハノンからやり直しました。
おそらく私の音色を聴いて、先生は「このままではダメだ」と思ったのだと思います。

大学に入学してから、「自分の弾き方」を変えていきました。
大学入学まで約15年間つづけていた弾き方を変えるのはかなり大変でした。

その経験があったからこそ、今のレッスンスタイルがあります。

弾けないのには必ず理由がある。
体のすみずみまで観察して、細かい筋肉や目の動き、意識の置き方などを研究していきました。

わたしのプロフィールはこちらのページへ

「脱力」を追っていてもきっと習得できなかった

脱力…という言葉をずっと言われていたからか、わたしの中で「脱力」は永遠のテーマでした。

ずっと「脱力」を追っていました。

大学の時に、基礎を見つめなおさなければ、もしかしたらずっと追い続けて、今もいまいちわからないままかもしれません。

「脱力」を追っていても「脱力」はできません。

そもそもあなたの考える「脱力」がピアノでいう「脱力」とは別物かもしれません。

わたしの場合はこんな悩みがありました。

  • 音が散る
  • 何時間も弾き続けると肘の内側が痛む(酷い時には腱鞘炎)
  • 「つかむ」が分からない

これらが「脱力」を考えていたら、解決していったのです。

…ただしくはほかの観点から練習を見直していき、気づいたら「脱力」が理解でき、気づいたらこのような悩みがなくなっていた、という感じです。

ピアノを弾いているときに脱力はしているのか

実際ピアノを弾いているときに脱力はしているのか。

「脱力」はしています。

しかし、一般的にいう「脱力」の感覚とは違うかもしれません。

一般的にいう「脱力」をしていると弾けません。

ここに気が付くまでにとても時間がかかってしまいました。
(誰かすでに気づいてる人が教えてくれたらよかったのにな…って思います)

ではピアノでいう「脱力」ってどういうことなのか?

わたしの考えるピアノを弾く上での「脱力」は…

体のあらゆる場所は適切に支えられていて、適切な筋肉が動き、それ以外の筋肉は楽な状態。

こういうことかな…と思っています。

脱力=力をぬく

と考えていたら、きっとずっと分からないままでした。

脱力までの道のり(気が付いたら脱力が理解できていた話)

ほかのことを見直していたら、気が付いたら脱力が理解できていた…と書きましたが、そのとき私が気にしていたことは「指先に重さを感じること」「手のひらでつかむこと」でした。

大学在学中に「脱力して!」と言われたことは1度もありません。
そのかわり「指先に重さを感じて」「手のひらでつかんで」と言われていました。

「指先に重さを感じて弾く」ということが分からずにいたんです。

なのでまずは強制的に重さをのせる練習をしました。

わたしが行ったのはこういう方法です。

  • ピアノの鍵盤から少し離れて立つ
  • 鍵盤にもたれるように指に重さをのせる
  • その状態ハノン21番~を弾くが、1秒に1音ずつ弾いていく。(メトロノーム60に1音ずつ)

これをひたすらしました。

そうすることで

  • 指先の重さがのった状態が分かる
  • どの筋肉で弾いているか分かる
  • 支える感覚が分かる

というメリットがありました。

そしてこれらが分かったことで「手のひらでつかむ」感覚も分かってきたんです。

そう、わたしの場合は適切な支えがなく、適切な筋肉が動いていなかったのです。

この見直しにはそれこそ大学4年間まるまる使いましたが、気が付いたら「脱力」が理解できていました。

適切に支えられ、適切な筋肉が使えていないと、ほかで支えてしまう

適切な支えというのは

  • 体幹
  • 関節

この2つを意識すると分かりやすいです。

体幹を意識してみる

まず、体幹はしっかりしている必要があります。

  • 腹筋
  • 背筋
  • 臀筋

これらは使える状態になっていますか?

また使えていますか?

そして忘れてはいけないのが肩甲骨

指や腕だけでは弾かないのはもう皆さんご存じだと思いますが、実際大きな筋肉は意識できていますか?

大きな筋肉が適切に動いていないと、腕で無駄に支えてしまうのです。

いま脱力で悩んでいる人は、脱力を考える前に、ここを見直してみてください。

関節で支えられているか

そして大切な関節。

関節はクッションがわりだと思っています。
なので柔軟さが必要です。

まず、指の関節というのは親指の第3関節(手首当たりの付け根)以外は支えられている必要があります。

特に第1関節や第2関節は気にする人が多いと思いますが、第3関節もとても大切です。
(グーっと握ると山の形になるところです)

それ以外の肘、手首、親指の第3関節も支えられている必要はありますが、柔軟さが必要です。

関節は固くかたまったものではなく、音色によって柔軟さが必要な個所です。

脱力の時に、すべての関節がゆるゆるになってしまっていると、余計な筋肉をつかって支える必要があります。

多くの先生が「脱力」と言っているのはおそらく手首とひじです。

この関節をどう使っていくかが、とても難しいのです。

ピアノにおいての脱力について考えてみる

まず、どうしてレッスンで「脱力」とよく言われるのでしょうか。

まだ重さを指先にのせる感覚がつかめていないことが大きいと思います。
手のひらの筋肉が使えておらず、腕の筋肉でどうにかしようとしてしまうんです。

そして、手首やひじの柔軟さがない。

そのため、手首やひじを常にがっちがちに固めた状態で弾いてしまうのです。

まずは腕の大きな筋肉の力を抜いていく必要があるので「脱力」という言葉をよく使います。

後は音色が固い(打鍵スピードの調整)も関係してきます。

脱力は、腕だけではなく、舌や首、肩なども必要な部位です。
割と力がぬきやすく、自分で意識的に直しやすい箇所です。

指先に重さを感じるためには

まず、指先に重さを感じられるようになるのが大切です。

基本的に重力が働くので、それに逆らわなければ指先に重さを感じることができるはずです。

先ほど、関節はクッションがわりになる、と書きました。
ピアノを弾く時の姿勢はひじが曲がっていることで重さを感じるのが難しくなっています。

  1. 1度立ってみて、ひじがあまり曲がらない位置にあるもの(テーブル)などに2、3、4番の指先をおきます。
  2. 肩からひじ、手首がなるべく一直線になるように。
  3. そしてその状態で、少し体重をかけてみてください。
    手首やひじは一直線にしたまま、ほんの少しだけ重さをかけます。
    この時の指先の感覚が「重さが乗っているとき」の指先の感覚になります。
    (指先が一番下にくるため重力を感じやすいです)
  4. 重さをのせたまま、座れたら座ってみてください。
    おそらく多くの場合はひじが床と平行になった時に指先の感覚が変わってしまうと思います。
    重さがひじに移ってしまうんですよね。
  5. 少し手首とひじを上げて、指先が一番下になるようにしてみてください。
    その重さを指先まで持っていけたらOK。

※文字でお伝えするとなかなか難しいので後日動画を撮ってみます。

脱力のしやすい肩からの重みは、多くはひじにとどまってしまいます。
手首が下がっていると手首にとどまってしまいます。

すぐにできなくても日をおいて何回もチャレンジしてみてください。
指先の感覚が分かるだけでも気づきになると思います。

イメージの仕方はこちらにも詳しく書いています。
参考▶ピアノを弾くときには肩甲骨から水を流そう。正しい姿勢、支えられる手、脱力。

手首とひじの脱力について

手首やひじは柔軟であるべきです。
実は、常に脱力状態なわけではありません。

音をならす瞬間というのは、体は緊張状態に入り、手首やひじというのも少し固める必要があります。

そして弾いた瞬間にゆるめるのです。

「脱力してね!」と言われると、手首もひじもゆるめてしまいます。
でもそこがゆるまっていると音はなりません。

今から歩こうとしているのに、ひざや足首がゆるまっていたら歩けませんよね。

足を踏み出す瞬間というのはやはり体は支えられ、緊張状態になっているはずです。
そして緊張状態が続くわけではなく、ゆるまる状態があるから次の一歩が踏み出せる。

ピアノを弾く時も同じなのです。

  • 弾く直前に緊張状態が作れていない
  • 常に固めた状態で弾いている

わたしがよく見るパターンはこの2つです。

手首やひじは柔軟であるべき理由

手首やひじというのはピアノを弾く時に常に変化しています。

固まったりゆるまったり、その繰り返しです。
それは作りたい音色によって変わってきます。

これはわたしの考えなのですが…

たとえばバロック時代~モーツァルトあたりまでの音色というのは、どこか下からの支えがあるような音色で作ります。(上のほうで音がなるイメージでしょうか)

その時に手首やひじを少し釣り上げて重さを調整してやるのです。

逆に下のほうで重い音が欲しいときというのは手首やひじが下のほうで滞在する時間が長くなるため、柔軟に動いています。

このように、時代や出したい音色によって、手首やひじの使い方が変わってきます。

そのため、音色によっては手首やひじを支えている筋肉は緊張状態になっているはずです。

ガッチガチに固めている筋肉とは違う筋肉が動きます。

ガチガチになっている筋肉と、支えている筋肉の感じ方

ガチガチに固めている筋肉と、支える筋肉は違ってきます。

  • ガチガチに固めた筋肉
    →力こぶを作るように腕に力を入れてみてください。この時と同じような筋肉が使われます。
  • 支える筋肉
    →普通に腕を下におろした状態からひじだけを意識しながらひじを広げてみてください。
    →手首の場合は手首を動かしてみましょう。
    必ず余計な力はぬいておこなってくださいね。
    その時に使われている筋肉が支えるときに必要な筋肉です。

多くの場合、ガチガチに固めた筋肉をゆるめなければいけないはずが、支える筋肉まで一緒にゆるめてしまいます。

その結果音がふにゃふにゃになる→注意をされてまたガチガチになる。
この繰り返しになってしまいます。

すべてをゆるめるのではなく、支えるために適切な筋肉は使えていることがとても大切なことなのです。

音を弾く瞬間は緊張状態、弾いた直後にゆるめるということ

音を弾く時は筋肉は緊張状態に入ります。

それは出したい音色をだすために意識的に腕を動かすからです。

筋肉がゆるむと動きは雑になります。

だいたんに動いているように見えるボールを投げる動きでも、同じように体を緊張状態にして、ボールが手から離れる瞬間にゆるむはずです。

目的の動きの準備段階では緊張状態、目的の動きが行われた瞬間はゆるんだ状態になります。

ピアノの場合も一緒で、大きな音を出す時でも音を出す瞬間は緊張していて、そのエネルギーを指先に放出するような感覚で音を弾いていきます。

そのエネルギーが大きくなればなるほど、手首やひじにとっては大きな負担になってしまうので関節をゆるめてクッションを働かせる必要があります。

その時に表面にあらわれる動きが、いわゆる「脱力」の動きかと思います。

そこばかりを切りとっても、うまくいきません。
腕をムダに動かす必要もないのです。

弾く直前に作られたエネルギーを放出するときに関節をゆるめて負担を逃がしている。

そんな感覚です。

なのでまずは

  • 指先に重さの乗った感覚を覚える(重力にさからわない)
  • エネルギーが支えられるようにまずは指の関節で支える(特に第3関節)
  • 手首やひじは柔軟になるように適切な筋肉で支える
  • 腕が自由に動かせるように、手のひらの筋肉や体幹で支える

ことが必要になります。

脱力≒すべてをゆるめて弾く

私が脱力を理解するのに時間がかかってしまったのは【脱力=力をぬく】という先入観があったからだと思います。

ピアノを弾く上での脱力は冒頭でもお伝えしたように

体のあらゆる場所は適切に支えられていて、適切な筋肉が動き、それ以外の筋肉は楽な状態。

だと思っています。

なので、支える筋肉さえも力をぬいてしまっていたらいつまでたっても脱力ができません。

  • 手首やひじにたまる重さを指先にもっていく
  • 指の関節はしっかり支える(特に第3関節)
  • 手のひらの筋肉を意識できるようにする(指の関節の支えにもつながります)
  • 手首やひじは支えが必要→そのための筋肉は緊張する
  • 音を弾く直前には体は緊張状態になる
  • 音を弾く瞬間にエネルギーを放出するため、衝撃をやわらげるために関節がゆるまる

このことが「脱力」ということだと思っています。

うまく脱力ができなくて悩んでいる方は、一度、がむしゃらに力をぬこうとしていないか見直してみてください。

手のひらの筋肉や、適切な筋肉が使えるようになると、自然と腕の状態は楽になります。

適切な筋肉が使えないと、必要ではない筋肉でおぎなおうとしてしまい、いわゆる「ガチガチ」状態になってしまうのです。

【脱力=力をぬく】という考えからぬけだすことができたら見方が変わると思います。
自分の体のすみずみまでよく観察し、いろいろ試してみてください。

ピアノを弾く時の体のしくみを理解したい方はこちらの本もおすすめです。

本のレビュー記事

誰かの気づきになれば幸いです。

参考

こちらのYouTubeチャンネルでも1つのテーマをとりあげて動画で説明しています。

ブログ記事でも、手のひらの筋肉を感じるためにはどうすればよいか?
ということをいくつか載せています。

ピアノを弾く筋肉はどこ?音が不安定な人は考え方を変えよう。
折り紙でカエルを作ってみよう!指でつかむ感覚を身に付ける。
ピアノを弾くときには肩甲骨から水を流そう。正しい姿勢、支えられる手、脱力。

コメント

  1. […] もがいていた過去▶20年間向き合った「脱力」。ピアノを弾く時は脱力状態? […]

タイトルとURLをコピーしました