ピアノの先生は一体どうやって譜読みをしているのか気になりませんか?
私も含め多くの先生は幼少期からピアノをはじめ、今までたくさんの曲の譜読みをしてきました。
学生時代には一曲15分程度の曲や、30分程度の曲を何曲も同時にこなし、短いスパンで譜読みを進めていくような感じで過ごしてきました。
そうしていればいやでも「譜読みの力」は身に付きます。
なかなか課題がこなせない時でも、どうやったら曲をはやく正確に読み取れるか、考えながら譜読みを進めてきました。
- 譜読みってどんなもの?
- どういう目線で見ていけばよいの?
- 譜読みの次の段階は?
このようなことを書いていこうと思います。
一般的な譜読みの常識とは違うかもしれません。
この記事を実践していただけるのは両手奏でも初見が問題なくできる中級以上の生徒かと思います。
また、導入~初級程度の方については別記事にまとめています。
譜読みってどんなもの?
「譜読み」のイメージってどんなものでしょうか?
もしかしたら
譜読み=音を最後まで見る
こう思っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかしそれは譜読みのごくごく初期の段階が終わったにすぎません。
では譜読みとはなにか?
譜読みとは…
楽譜に書かれてあることを読み取り、自分の中に落とし込む作業です。
楽譜にはなにが書かれている?
楽譜にはどんなことが書かれていますか?
- 曲の名前(作品番号のみのものも多くあります)
- 曲のテンポ
- 音部記号
- 拍子
- 調号
- 音の高さ
- 音符のリズム
- 表現記号
- フレーズ
などなど楽譜に書かれているものだけでもこれだけのものがあります。
そこから読み取れるものはさらにたくさん増えていきます。
- 曲の名前やテンポ感でイメージがつき
- 拍子で曲の鼓動が分かり
- 調号で曲の色が分かり
- 音の高さの違いでエネルギーが分かり
- リズムで音の動きが分かり
- フレーズで形が分かる
さらに目で確かめられるもののほかにも、
- どのような構成でできているのだろうか?
- どんなメロディー?
- それぞれの和声はどうなっているのだろうか?
- フレーズはどうつなげていこうか?
こういったことを考えて譜読みをしていきます。
楽譜に書かれているさらに先のことというのはこういうことです。
同時に作曲家のことや曲についての時代背景を知っていくとより理解が深まります。
ピアノの先生の譜読みのプロセス(さき先生の場合)
ではピアノの先生が初めて弾く曲をどのように譜読みしていくか、プロセスを書いていこうと思います。
これはあくまで私の場合。
人によって、プロセスは変わってくると思います。
簡単に私個人のピアノ歴、得意不得意をご紹介します。
ピアノは3歳から。ピアノ歴27年。
得意なこと
- 曲のイメージを感じ取ること
- 音や音楽への感情移入
- 短いメロディーを歌うこと
- 音色を研究すること
不得意なこと
- 初見
- 高度なテクニック(都度練習が必要)
- 全体像を組み立てること
- フレーズを長く作ること
そんな私の譜読み方法です。
譜読みの際に必ず必要なのは鉛筆。
気が付いたことはその場で書き込めるようにしておきます。(覚えてられる場合は書かないこともあります)
そして付箋。
100均のものですが、小さくて細いものが楽譜に使いやすく愛用しています。
何十ページもある長い曲の場合、部分練習が必要な個所にしるしをつけています。
後述の譜読みプロセス1に出てきます。
譜読みのプロセス1:全体像を把握する
まずは細かい譜読みをしていく前に曲の全体像を確認していきます。
- ざっくり初めから最後まで楽譜に目を通す。
- 一回曲全体を両手で音読みをしていく。
- この段階で(楽譜に目を通した段階で)「テクニック的に難しいところ(練習が必要なところ)」「表現が難しいところ(音源を聴いたり研究が必要)」が分かるので長い曲の場合は付箋でしるしをつけておく。
- ざっくりと構成を考える。
このような形で全体像を確認していきます。
なぜ先に全体像を確認するかというと…
例えば
「□」の形を見せられてから、「縦、横、縦、横の線を書いてください。」
と言われた場合と
なにも形を見せずに「縦、横、縦、横の線を書いてください。」
と言われたら、仕上がるものが違ってきますよね。
もしかしたら後者の場合はいくら回数を重ねても□にはならないかもしれません。
という風に…全体像を把握するのはとても大切です。
ここでは全体像の確認なので、ざっくり見ていきます。(多分音間違えとかもあります)
中級以上の、両手で問題なく初見が弾ける程度であれば有効ですが、まだ両手でたどたどしいうちは1.の「楽譜全体に目を通す」工程だけでよいでしょう。
導入から初級程度の方の譜読み方法はまた別記事に書かせていただきます。
まだ曲も短く、単純な構成でしょうから、無理に音に出して確認する必要はありません。
譜読みプロセス2:細かく楽譜を見ていく
全体像が分かったところで、細かく細かく譜読みを進めていきます。
この段階で、ほぼ曲が仕上がるように作っていきます。
この後は音色の研究、曲の流れ方の研究、テクニックの攻略のために練習時間を使っていきます。
- はじめからワンフレーズごとにゆっくり音を見ていく。
- まずは枠組みから確認。
どんなメロディーか。どんな和声で進んでいるか。なにが軸になっているか。 - 同時に楽譜に書かれている記号も見ていく。
- 指使いは何が最適か考えていく。
- どんな音色がふさわしいか、少し考えていく。
- メロディーはどう流そうか?この和声の意味は?
感じるだけではなく理論的にも見ていく。 - フレーズごとにメロディーの流し方(腕の使い方)も確認し組み立てていく。
- 曲想も詳しく見ていく。
- 迷宮入りしたら音源をたくさん聴いてみる。
- 難しいテクニックは都度部分練習を取り入れる。
- ペダルもどこでどのように使うのが最適か考えていく。
とざっくりと書きましたが、この工程は書ききれません。
そして順序は存在せず、その箇所に応じて考えていっています。
私の場合、高度なテクニックはすぐに弾けないことや、初見能力がイマイチなのもあり、かなりゆっくりなテンポで数小節ずつ取り組んでいます。
はじめの段階で自分が理解できて、しっかりコントロールできるテンポで進めていきます。
テンポはゆっくりですが、エネルギーはテンポを上げた時と変わらないように弾きます。
この工程では何度も繰り返し練習しますので、ほぼ暗譜で人前で弾けるように仕上がっていきます。
細かく部分練習ができない人はこんな方法も
細かく部分練習しないといけないのはわかるけど、めんどくさいし、結局通しておしまいなんだよね…
なんていう人は中級以上の方にはいないと思いますが、私は高校生まで部分練習が苦手でした。
部分練習をしないということは「〇付けしたり、見直しして攻略する」ということを放棄した状態。
音を鳴らしたらそれっきりな状態です。
そんな状況から脱した方法が
楽譜を切り分ける!
という方法でした。
これはどういうことかというと
目の前にあるものは弾きたくなっちゃうから、1フレーズ分しか譜面台に置かない
ということをしてみました。
- 楽譜をコピー
- フレーズごとにしるしをいれる
- 切り分ける
- そのフレーズで気を付けるところを書き込む
- 全ての書き込みが攻略できたら次のフレーズ
というのを繰り返していきました。
この練習をはじめてしたのはショパンのエチュードOp.10-4でした。
ソナタなどページ数が多いものはコピーが大変ですので、エチュードのようにページ数が少ないもので取組んでみてください。
一度部分練習の大切さを実感したら、その後はコピーをしなくても同じように練習できるはずです。
ページ数が多い曲でもやりたい場合は先ほどもご紹介した付箋を有効的に使ってみてください。
これはブルグミュラーのアラベスクなのでページ数は少ないですが、楽譜の右上にピンクの付箋を貼っているのが分かると思います。
「はじめからこのピンクの付箋まで練習する!」
と決めて、練習していき、できたらずらしていきます。
頭ではわかってるけど…の状態を脱するには強制的に部分練習ができる仕組みを作ってしまったほうがいいです。
譜読みの次の段階は?
ここまで譜読みについて書いてきましたが、譜読みでほぼ曲が仕上がる状態までもっていくことがお分かりいただけたでしょうか?
楽譜に書かれてあることを表現するにはいろいろなプロセスが必要なのです。
では譜読みが終わった後はどんな段階に入っているかというと…
ほぼ暗譜で弾け、表現もほとんど固まっている状態です。
さらに良い演奏を目指すとなると、
- さらなる音へのこだわり
- さらなる曲の研究
- 苦手なテクニックの繰り返し練習(苦手なテクニックは本番でハプニングが起きやすい)
- 全体像の再確認
などが必要です。
譜読みの考え方は人それぞれではありますが、楽譜に書いていることを読み解き、人前である程度弾ける状態にもっていくまでが譜読み。
そう考えていくと譜読みの方法や曲に向かう姿勢が変わるかもしれません。
一度試してみてくださいね。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] ▶中級以上の方向け:ピアノ歴27年のピアノの先生の譜読み方法 […]